yukaina_gorilla’s diary

ごりらぼくし(大麻ルーテル教会/北見聖ペテロ・ルーテル教会)です。聖書や教会のこと、社会のこと、ペットのことなど書いていきますね。

2017年12月24日 礼拝メッセージ(待降節第4主日)

待降節第4主日 2017年12月24日

「お言葉どおり」

ルカによる福音書1章26~38節)

 

わたしたちの父である神と、主イエス・キリストからの恵みと平和があなたがたにあるように。アーメン

 

私たちは、今年も間もなくクリスマス、神の御子、救い主イエスさまのご降誕、お誕生の祝いを迎えます。今日は、その前に、今一度、みことばによって、私たちのもとにおいでくださる主を待ち望む心を整えて、クリスマス、ご降誕のお祝いに備えたいと思います。

 

ところで、私たちがクリスマスを迎えるということは、今年も間もなく一年の終わりを迎えるということでもあります。事実、毎週日曜日の礼拝も、今年は、今日と、あと来週の二回を残すのみとなりました。来週は、12月31日です。自分が年を重ねているからでしょうか。それとも、今年は私自身にとっても、異動や引っ越しというような大きな変化があったからでしょうか。一年が経つのが非常に早かったように思いますし、年々早くなっているような気もします。もちろん一年は365日ないし366日で、毎年変わらないわけですが。「もうクリスマスか」、また、「もう年末なのか」と、そんな思いで過ごしています。

 

みなさんにとって、この一年は一体どんな一年だったでしょうか。きっとそれぞれにいろんなことがあった一年であったと思います。平凡な毎日を過ごすだけで今日を迎えたという方は少ないでしょう。もちろん喜びの出来事もあったでしょうが、そうではない悲しい辛い出来事、寂しい出来事もあったことと思います。「え、何でこんなことが」「どうしてそうなるの」という出来事も、みなさんそれぞれにあったのではないでしょうか。

 

さて、先ほどご一緒に聴いた福音は、イエスさまのご降誕の前に起こった、一つの重要な出来事を伝えていました。一人の若き女性であるマリアのもとに、天使ガブリエルが現れ、彼女が幼な子を身ごもった、つまり、妊娠したという事実を告げたという出来事が、そこには報告されていました。この時、マリアは若干13歳あるいは16歳ごろであったと言われます。今で言うなら、中学生ないし高校生の年齢です。そうしたマリアにとって実に驚愕すべき事実を、天使は告げるのです。

 

「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」天使はいきなりそのようにマリアに語りかけました。この前の火曜日と水曜日に、大麻教会が母体であるひかり幼稚園でクリスマス会が行われて、そこでクリスマス、イエスさまのお誕生について、子どもたちが劇で演じてくれました。その劇では、天使が「おめでとうマリアさん」と言ってマリアが身ごもった事実を告げて、それに対してマリアも、「ありがとう天使さん」と答える、そうした幸せいっぱいな感じで演じられて、見ていてほのぼのと感じました。しかし、実際のマリアにとっては、最初、天使の知らせを聞いたときには、それは決しておめでたく感じる喜ぶでき出来事ではなく、普通に考えるなら、神さまの恵みを感じることも、主がともにおられるということも信じられない出来事であったことでしょう。ですから、マリアは、天使が、いま一体何を言ってるのか、訳がわからない、そんな思いになりました。これは当然でしょうね。

 

しかし、そんな彼女の思いをよそに、天使は続けて言うのです。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」

 

この天使のお告げを聞いて、マリアはたいへん驚き、そして、必死になって否定をしました。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」そうです。マリアは、この天使の知らせを決して受け入れるわけにはいかなかったのです。当時の社会で、結婚前の女性が妊娠をすることはもちろん許されておりませんし、妊娠する可能性のある行為をすることも決して許されないことでした。まして、マリアには婚約者ヨセフがおりました。未婚の女性が妊娠をするということ、そのことだけでも大きな問題であるのに、しかも、そのお腹の子の父親は彼女の婚約者ヨセフではないという事実、これは他の人たちから見るならば、マリアが、婚約者以外の男性と不貞を働いたと思われて、それは、倫理的・道徳的に問題であったというだけでなく、当時は社会的・法理的にも、重大な罪を犯したとみなされる大変な出来事でありました。

 

当時の社会で定められていた掟によるなら、マリアは、神と人の前に決して赦されることのない重大な罪を犯した女性として、石打ちの刑によって処刑されてしまっても仕方がない出来事であったのです。そうです。彼女は、ここで命の危険にさらされる事態に遭遇してしまったのでした。ですから、彼女は「どうして、そのようなことがありえましょうか」と天使に対して反論をするのです。つまり、「そんなことありえません」「あってはなりません」と必死になって、天使のお告げを否定するしかありませんでした。

 

まして、彼女は「わたしは男の人を知りませんのに」と言っています。妊娠に至る男性とのそうした行為自体、一切経験がないのに、なぜこうしたことになるのか、マリアはまったく理解することができず、その意味でも天使のお告げを強く否定するしかありませんでした。

 

しかし、天使はなおも語り続けます。あたかも畳みかけるように、マリアに向かって言うのです。聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない。」

 

これは、こういうことです。あなたは、いま心の中が心配でいっぱいで恐れているだろう。でも、そんなあなたに聖霊、神さまの霊が降る。神さまの思いがあなたとともにある。神さまはあなたから離れず、あなたのことを気にかけ、あなたの心の中に住んでくださる。そして私たちの思いをすべてを超えて最も高いところにおられる、神さまの力があなたを包み込む。だから大丈夫。あなたの親戚のエリサベトだって、高齢で、もう妊娠することなんて不可能なはずなのに、妊娠して、もう六ヶ月になっているじゃないか。神さまにはできないことなど何一つない。神さまは何だってできる。だから心配しなくていい。そのように天使は、マリアに告げるのでした。

 

それに対してマリアは、未だ心配や不安、恐れを心に抱きながらも、答えるのです。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」

 

「わたしは主のはしためです」。「わたしは主のしもべ、奴隷です」という意味です。奴隷は、主人がいなければ生活していくことができません。「わたしは主のはしためです」と言うのですから、つまり、「主がいなければ私は生きていけない、ただただ主によって生かされ養われている、そうした者です」ということです。ですから、「お言葉どおり」、私はただただ神さまのお言葉の通り、「この身になりますように」これからの私の行く末が神さまのおことばの通りに進んでいきますように。そのように、マリアは、信仰のうちに答えるのでした。

 

だからと言って、きっと、マリアの心の中にある心配は、未だ消えることはなかったでしょう。依然として、彼女の心の中は不安がいっぱいで、恐れがいっぱいであったと思います。でも、そうした恐れ不安の中にある自分のことを、神さまが気にかけてくださる、神さまが私のうちにおられ、神さまの力で私を包み込んでくださる。神さまは何だってできるのだから。神さまに不可能なんて何もないのだから。だから私は、その神さまのお言葉にかけよう。とマリアは決断をするのです。神さまのおことばの舟に乗ってゆらゆらと揺られながら生きていこう。それこそがきっと最も良い目的地に至るはずだ。マリアはそんな思いで、この「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」と、告白したのであろうと思います。

 

ビートルズの「let it be」と言う歌があります。これは、まさに、このマリアの出来事をもとにした歌であると考えられます。歌詞を日本語に訳してみました。ぼくがずっと困難の中にあるとき、僕のそばに母マリアがやってきて、賢い知恵のことばをそっとささやいてくれるんだ 「let it be」と。ぼくが暗闇の中にいるとき、彼女はぼくのすぐそばに立ってそっとささやいてくれるんだ 「let it be」と。心が壊れながら、この世界に生きている人たちの思いはみな同じ。そのたったひとつの答えは「let it be」。みんなが別れ別れになったとしても、いつかまた会える日が来る。そのたった一つの答えは「let it be」。たとえ夜の空が曇っていても、ぼくらを照らす光がある。明日まで照らしてくれる光が。「let it be」音楽に目覚めたら母マリアがぼくに近づいてきて、賢い知恵の言葉をそっとささやいてくれるんだ。「let it be」と。

 

この「let it be」は、「あるがままに」とか「なすがままに」とか、そんな風に日本語に訳される言葉ですが、実は、今日のみことばのマリアの「お言葉どおり、この身になりますように」という言葉をもとにしたものです。英語の聖書で、今日のこのルカ1章38節をこう訳されているものがあります。"And Mary said, "Behold, I am the servant of the Lord; let it be to me according to your word."

 

間もなくクリスマスを迎える私たちも、このマリアと共にlet it be、そうした思いで過ごしたいと思います。私たちにも、本当にいろんなことが起こります。ある日、突然思いもかけなかったようなことが、わが身に、あるいは、私たちの家族や友人、愛する者の身に降りかかります。災害や事故、病気、仕事、人間関係、実にいろんなトラブルに、私たちは見舞われます。「どうして、そのようなことがありえましょうか」と必死になって否定したいこと、「そんなこと決してあってはなりません。絶対にあり得ません。」と叫びたいことも起こります。そして、そこで、私たちは、不安になり、恐ろしくなり、どうしてよいかわからなくなってしまいます。生きていることが辛くなります。生きていて悲しく苦しくなります。

 

でも、神さまは、そんな私たちに語りかけてくださるのです。私があなたのことを思っている。私があなたの心の中にいる。そして、私の力であなたのことを包み込む。だから大丈夫。恐れるな。私には何でもできる。私にはできないことは何もない。私があなたのことを考えて、あなたのためにもっともよい方向へ進めていくから。だから心配いらない。「おめでとう。恵まれた方。主があなたと共におられる」と。

 

その神さまのことばに対して、私たちは「Let it be」「なるがままに」、「あるがままに」、そう答えたいのです。でも、それは根拠のない「なるがまま」でも、投げやりの「あるがまま」でもありません。「お言葉どおり、この身になりますように」。神さまのおことば、確かな永遠の愛のみことばが、この私の身に起こるのです。だからもう大丈夫、何も心配いりません。

 

今日の福音を何度か読み直して、なるほどと思ったことがあります。私は最初今日の福音はマリアについて書かれていると思っていました。でも、今日のみことばは「六か月目に、天使ガブリエルは、ナザレというガリラヤの町に神から遣わされた。ダビデ家のヨセフという人のいいなずけであるおとめのところに遣わされたのである。そのおとめの名はマリアといった」との言葉から始まっています。そうなんです!これはマリアの物語と言うよりも、天使ガブリエルの物語、もっと言うならば、ガブリエルを遣わした神さまの物語なのです。

 

マリアが、この神さまの物語の中に、自分の身に起きたことを位置付けたとき、彼女は「お言葉どおり、この身になりますように」と、神さまへの信頼のうちにそれを受け入れることができたのだと思います。私たちも同じです。自分の身に起こっていることを、ただ自分の枠の中だけで捉えようとするとき、「どうして、そのようなことがありえましょうか」という思いがいつまでも続きます。でも、神さまの物語の中でこのことが起きていると受け止めるとき、私たちも「let it be」「お言葉どおり、この身になりますように」と受け入れることができるのではないでしょうか。

 

マリアのお腹に宿り、やがて彼女から生まれて来る子は、インマヌエル「神は私たちとともにおられる」そのたしかなしるしです。彼女は、自分の抱える心配や恐れを、神さまの物語に包まれて、自分のお腹に宿る子に導かれて受け入れていきます。私たちのもとにも、幼な子イエスさまはお生まれくださいます。その子に導かれて、「Let it be」「お言葉どおり、この身になりますように」、マリアと共に告白したいと思います。

 

主よ、私たちを導いてください。

 

今年もいろんなことがあった一年でした。そうした中で「どうして、そのようなことがあり得ましょうか」と、なかなか受け入れがたいこともありました。でも、あなたの物語の中に私たちのすべてが包み込まれていること、そして御子イエスさまが私たちと共におられることを信じ、あなたの愛の御手の働きに信頼して、Let it be「お言葉どおり、この身になりますように」と受け入れることができるように導いてください。御子のお誕生を感謝します。どうか、私たちが心から喜び祝うことができますように。救い主イエスさまのお名前によって祈ります。アーメン

 

希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たし、聖霊の力によって希望に満ちあふれさせてくださるように。アーメン

 

動画 2017-12-24unedited.mp4 - Google ドライブ

 

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